一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
6.剛毅な妻のスイートハニー
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本邸の長い廊下には同じようなドアがいくつも並んでいて、一度訪れた程度ではどこになにがあるのか、とうてい把握できない。
いつも冷静沈着で感情を表に出さない坂城さんが、私の前を歩きながらどことなく不安げな視線をよこした。
「本当に、お会いになるのですか?」
「はい」
はっきり返事をしたら、ふっと吐息の漏れる音がした。呆れられたのかなと目を向けると、優秀な執事の口もとにはなぜか笑みが浮かんでいる。
「こちらになります」
そう言ってひときわ大きなドアの前で立ち止まり、坂城さんは手早くノックをした。