一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
2.強情夫婦のベッドルーム
***
薄紅色に覆われていた桜の樹に緑が芽吹き、葉の割合が多くなった連休前の金曜日。引き継ぎ作業を終わらせて最後の挨拶をし、会社からアパートに戻ったところで目を疑った。
「な……」
私の住む木造アパートの二階の部屋から、荷物が運び出されている。
見覚えのある棚やテーブルが通りに停まった引越業者のトラックに次々と積みこまれていくのをしばらく呆然と眺めてからハッとした。
「なにしてるんですか!」
トラックに乗り込もうとしていた作業服の男性に声をかけると、彼は手にしていた書類から顔を上げた。不審そうに私を見下ろし、アパートとトラックを交互に見る。
「なにって、引越作業です」
「それは見ればわかります! そうじゃなくて、そこ、私の部屋なんです。引越なんて頼んでない。戻してください」
「いや、そう言われても」
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薄紅色に覆われていた桜の樹に緑が芽吹き、葉の割合が多くなった連休前の金曜日。引き継ぎ作業を終わらせて最後の挨拶をし、会社からアパートに戻ったところで目を疑った。
「な……」
私の住む木造アパートの二階の部屋から、荷物が運び出されている。
見覚えのある棚やテーブルが通りに停まった引越業者のトラックに次々と積みこまれていくのをしばらく呆然と眺めてからハッとした。
「なにしてるんですか!」
トラックに乗り込もうとしていた作業服の男性に声をかけると、彼は手にしていた書類から顔を上げた。不審そうに私を見下ろし、アパートとトラックを交互に見る。
「なにって、引越作業です」
「それは見ればわかります! そうじゃなくて、そこ、私の部屋なんです。引越なんて頼んでない。戻してください」
「いや、そう言われても」