一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
先に乗りこんでいた運転席の男性と目を合わせて、困ったように私を振り返る。
「俺たちは言われた通りに作業してるだけなんで。なにかあれば営業所の方に問い合わせてください」
私に名刺を押し付けると、彼は助手席に乗りこんでドアを閉めてしまった。
「ちょ……」
エンジンが音を立て、私の荷物を積んだトラックが走り去る。
あまりに唐突だった。通りに突っ立ったまま、夕日が赤く燃える方向に向かって小さくなっていくトラックをただただ見送る。
いったい、なにが起こったの……?
見上げると、二階のドアは開けっ放しになっている。五年前からつい今朝まで普通に暮らしていたそこは、通りから見た限りがらんとしていた。