最後の言葉
「アリサ…俺、今からまた仕事だから…ハルナのこと頼むな」
「エッ?さっき帰って来たばっかじゃん!」
「悪いな、もう数日空けるから…ついでにシュンとかいうヤツのとこ寄って説得してみるわ」
「無理だって…」
アリサは、カズオが左手に何やら握っているのに気が付きました。
「カズにィ…それ、何?」
「なんでもない…仕事道具だよ」
カズオは握っていた物をジーパンのポケットに押し込むと、夕暮れの街へと消えてゆきました。
陽も落ちて冷え冷えとする中、カズオはシュンの住むマンションの前で、シュンの帰りを待ちました。
しばらくすると、シュンらしき人物が歩いて来ます。
アリサからシュンの特徴を聞いていたので、すぐにシュンだと判りました。
「シュン君…ですか?」
「ハイ、そうですけど…あなたは…?」