負け犬の傷に、キス
津上さんは俺を買いかぶりすぎだよ。
俺は臆病な“負け犬”。
全然かっこよくない。
他の族のヤツらも、下っ端だってそう思ってる。
何も勘違いじゃない。
「わたしもかっこよく在りたい。そうなれたらやっと、胸を張って草壁くんの隣に立てる気がする。……だから、まだ、そのバラは受け取れない」
ハンカチを持つ手がグッと力んだ。
怖いんだろう。苦しんだろう。
それでも立ち向かうんだな。
たったひとりで。
「津上さんは今のままでもかっこいいし、強いよ。俺なんかよりずっと」
「そ、そんな……草壁くんのほうが……!」
「でも、それでも足りないなら、一緒にかっこよくなろうよ」
わざと遮って、津上さんの手を握った。
力のこもった拳をそうっと包んでいく。
「ひとりでなんとかしようとしなくていいんだよ」
ひとりで背負い込まないで。
もっと俺を頼ってよ。
「白薔薇にもぐり込んで……は厳しいかもしれないけど、立ち向かうのは俺とじゃだめなの?」
「っ、」
「俺にとっては十分だけど、津上さんにとってはそうじゃないなら……俺は津上さんのために何かしてあげたいって思うよ」
ひとりじゃ難しくても、ふたりでならできるかもしれないだろ?