負け犬の傷に、キス


もうひとりじゃない。


俺が……いや、俺と、一緒にいよう。



細い体を引き寄せて抱きしめた。


力強くなくていい。

弱くても、たしかにぎゅっと。



俺の胸ですすり泣く津上さんの頭をポンポンと撫でる。



受け取ってくれてありがとう。


……ありがとう。




「俺、津上さんの家族に会いに行くよ」


「え?」




憂いげに顔を上げた津上さんに微笑む。

両手でしっかりとバラを手渡した。




「で、でも……」


「会って話に行こう。一回じゃ伝わらないかもしれないけど、わかってもらうまで俺も一緒に立ち向かうよ」




正直どうなるかわからない。


いつも逃げてばかりで
自分から傷つきに行くなんてめったにしないし。


めちゃくちゃ非難されて、俺のメンタルがボロボロになる想像しかできない……。



でも、津上さんはわかり合いたいんだよね。


それなら俺も、いくらメンタルをやられようと食い下がるよ。




「一緒に、会いに行こう」




津上さんの目元ににじむ涙を拭って、手を差し伸べる。


大丈夫だって保証はできない。

だけどなんとかしたい。


思い立ったが吉日、って言うだろ?



津上さんは少し迷いながらも決意した顔つきで手を取った。



「うん、行こう」



ほら、やっぱり。

すごくかっこいいよ。


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