負け犬の傷に、キス






うおぉ……。

改めて見るとすごい迫力。



津上病院を前に胃がキリキリしてくる。


ここに津上さんのご両親が働いてるんだよな……。


怖い……けど頑張るしかない!

気分は消極的な討ち入りだ。



病院内に入り、津上さんがカウンターで話を通す。


両親に会いに来た、用がある
と、話せば、指定のエレベーターと何階にいるかを教えてくれた。



おお……!
さすが津上病院の跡継ぎ。顔パスみたい。



俺たちは指定のエレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押す。



手はつないだまま。


もう片方の津上さんの手には、赤いバラ。

握りすぎてラッピングがくしゃりとなってしまってる。




「たぶん最上階にお父さんがいるんだと思う」


「お父さんって……」


「この病院の、院長なの」




……そ、そう、だよな。津上さんが跡継ぎなら、ご両親はおえらい立場で……。



ん? 待って。

今、改めて考えたんだけど……


俺、これから、津上さんのお父さまに会うの?


つまり彼女のご家族にごあいさつ?
娘さんをボクにくださいってやつ?


……え!?



俺のことをちゃんとわかってもらう機会に、プラスしてごあいさつ!?


どうしよう。さっきとは違う意味で怖くなってきた。


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