負け犬の傷に、キス
*
うおぉ……。
改めて見るとすごい迫力。
津上病院を前に胃がキリキリしてくる。
ここに津上さんのご両親が働いてるんだよな……。
怖い……けど頑張るしかない!
気分は消極的な討ち入りだ。
病院内に入り、津上さんがカウンターで話を通す。
両親に会いに来た、用がある
と、話せば、指定のエレベーターと何階にいるかを教えてくれた。
おお……!
さすが津上病院の跡継ぎ。顔パスみたい。
俺たちは指定のエレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押す。
手はつないだまま。
もう片方の津上さんの手には、赤いバラ。
握りすぎてラッピングがくしゃりとなってしまってる。
「たぶん最上階にお父さんがいるんだと思う」
「お父さんって……」
「この病院の、院長なの」
……そ、そう、だよな。津上さんが跡継ぎなら、ご両親はおえらい立場で……。
ん? 待って。
今、改めて考えたんだけど……
俺、これから、津上さんのお父さまに会うの?
つまり彼女のご家族にごあいさつ?
娘さんをボクにくださいってやつ?
……え!?
俺のことをちゃんとわかってもらう機会に、プラスしてごあいさつ!?
どうしよう。さっきとは違う意味で怖くなってきた。