負け犬の傷に、キス


無意識に背筋が伸びる。



「え、ええっと……」



何ごとも第一印象って大事だよな。

まず何を言えば……何を……。




「む、娘さんをボクにください!!」




…………な、

何を言ってんだ俺は!!


さっき考えちゃったせいだ!

ああもう! 俺のバカヤロー!!




「く、草壁くん!?」


「はあ?」




やばっ、雰囲気がまがまがしくなった……!


ですよね! いきなりそんなこと言われたらそうなりますよねー!




「ち、ちがっ……今のはちがくて……!!」




言葉のあやというか……セリフのチョイスを間違えたというか……!


とりあえず巻き返そうとびしっと姿勢を正した。




「お、俺……じゃなくてボクは、西校1年、草壁希勇といいます! つか……夕日さんとお付き合いさせていただいてます!」




つい先ほどから。




「それで……その……」


「わ、わたしたち、お父さんに話があって来たの」




空回りする俺の隣で、助け船が出る。


ごめん、津上さん。
たぶん自己紹介失敗しちゃった……。


協力しに来たのに、足引っ張ってどうすんだよ……。




「話?」


「昨日学校をサボったことは……ごめんなさい。でも……でもね、サボったのは理由があるの。学校やお父さんは、不良と関わるのは悪いことだって思ってるけど、そうじゃなくて……!」


「はぁ~」




院長のため息に、津上さんは思わず生唾を飲み込んだ。


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