負け犬の傷に、キス
●逃避
あちこちで俺を探す声。
ドタバタと響く足音。
騒がしい赤いサイレン。
「……警察まで動いてるのかよ!?」
津上病院、恐ろしい……!
どんだけ権力を持ってるんだ。
「津上さんは大丈夫かな……」
……って、まず自分が大丈夫じゃないだろ!
この状況をなんとかしなきゃ。
警備室で事情聴取しようとした隙に、逃げてきたはいいものの……
こうも追手が多いんじゃ思うように動けない。
「俺は指名手配犯か何かか?」
まだ病院と近い距離にいる。
路地に隠れてはいるが、見つかるのも時間の問題だろうな。
こうなったらイチかバチか。
森作戦でいこう!
「木を隠すなら森の中だー!!」
住宅街を通り、繁華街へ突っ走っていく。
日が暮れてきた。
部活を終えた学生や仕事帰りの社会人が、ちょうど繁華街周辺を行き交ってる。
そこにまぎれこめば……いけるはず!
横断歩道を渡る学ランやブレザーの制服たちを追い越し、繁華街の大通りを歩いていく。
今日も今日とて混雑してて助かった。
ちらほらと警察官がいるのを確認し、雑踏に息をひそめながら路地裏に入った。