負け犬の傷に、キス


焦るな。落ち着け。


うしろにいる人は追手じゃない。

声が若すぎる。



……じゃあ一体誰だ。



怖々と振り返ってみると、




「……えっ」




…………ちっちゃい。




思っていたより背が低くて拍子抜けした。


津上さんと同じくらいだろうか。



小さな男の子。

学ランを着てるから中学生かな。


……あれ? 小柄な、中学生?



そういえば、津上さんから聞いた、怪しい中学生と似てるな!?



ライトブラウンの髪。
しかも美形。

間違いない!


見つけた! 探してた例の中学生!



なんでこんなところにいるんだ?




「お困りならお助けしますよ」




物腰柔らかな口調。

崩れないカンペキな笑顔。


俺が中学生だったころと比べものにならないくらい大人びている。


ちょっと怖いくらい。


津上さんが怪しむわけだ。




「た、助けるってどうやって……?」


「ここに身をひそめて、パトカーを見ているところから察するに……警察から逃げているのでは?」




大当たり!!


一瞬で把握するなんてすごい洞察力。

見た目からしてかしこそう。




「あそこにいる警察を少しの間移動させればいいんですよね?」


「あ、ああ、できるなら……」


「僕たちに任せてください」




僕、たち……?


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