負け犬の傷に、キス
だけどそのおかげで作戦を決められた。
望空ちゃんも協力すると言ってくれて
作戦をより成功しやすくなった。
「うまくいく、よね……?」
「あの2人が裏切らなければね」
薫の考えすぎだと一蹴できたら、不安にならずに済んだ。
……だけど、できない、な。
博くんとユキはずっと謎めいたままだった。
「善人の皮をかぶった悪人かもしれない。素性も目的もはっきりしない以上、信用なんかできない」
「あいつらだって、俺たちが裏切らねぇようにしょっぱなから脅してたしな」
切り札にだってなり得た、2人の秘密。
それを惜しげもなくひろうした。
この程度の秘密ならいくらでも持ってる。口外されたくなければ――そう暗に追い詰めるように。
そんなことしなくても恩人を裏切るはずないのに。
「あの2人も見定めてた。初めからずっと」
薫は不満げに口を尖らせた。
「作戦に成功しない限り、自分たちの情報は教える気がないって言ってたじゃん? あれってきっと、この作戦で失敗するような雑魚に協力を頼んでも意味ないってことなんだよ。双雷にケンカ売ってんの」
「ざ、雑魚って、それは……」
「だからこっちも見定めてやるの。あの2人がどんなヤツらで、どこまでやれるのか」
メラメラ燃えてるな……。
警戒しすぎな気もするけど、それは博くんとユキも同じ。
丸くおさまることを願っておこう。
「あいつらのことは俺らに任せろよ」
眠たそうにまぶたを伏せた柏に、小さく頷いた。
俺も眠くなってきた。
今日は長い一日だった。
疲れもたまってるんだろうな。
明日も早い。
今のうちにひと眠り、と考えているうちに頭がカクンと落ちた。