負け犬の傷に、キス
「津上さん、一緒に逃げてくれてありがとう」
「……っ、それは、わたしのセリフだよ」
「俺、あきらめてないから。また気持ちを伝えに行こ」
「それも……わたしの、セリフ……っ。……ありがとう……」
両頬と耳たぶに帯びていた赤みが、じわりじわりと、きれいな目元に侵食していった。
いとおしくてたまらなくなって
涙の浮かぶ目尻に
熱くなった目頭に
震えるまぶたに
そうっと触れるだけのキスをした。
パチパチとまたたくダークブラウンの瞳がかわいらしい。
つい唇の赤色をもらってしまった。
「っ、ん……」
「好きだよ」
さっき『大好き』って言ってくれたのに返せなかったから。
今、言ってみた。
もう一回、もう二回、キス、してみた。
あ。真っ赤な顔を両手で隠されちゃった。
もしかして嫌だった?
「く、草壁くんがかっこよすぎて……どうしよう」
……違ったみたい。
人差し指と薬指の間から上目遣いで盗み見てくる。
うっ……。
これじゃあ俺も赤くなるよ。
ウソ。もうとっくにになってる。
「津上さんがかわいすぎてどうしよう……」