負け犬の傷に、キス



「げろ甘な出迎えどーも」


「!?」




背後に、ドス黒い気配。

ドキーッ!!と心臓がびくつく。



飛び上がって、振り向けば。


無表情な薫と柏と

苦笑する博とユキが。



ぎゃあああっ!!と叫びたい気持ちをぐっとこらえる。




「い、い、いつから……!?」


「かわいすぎてどうしようってもだえてるところ」


「ぎゃあああっ!!」




薫の冷たい視線に我慢できずに叫んでしまった。

ムリ。限界だった。



キスしてるところを見られなかっただけマシか!?


いやいや、どこを見られても恥ずか死ぬ!!



津上さんの顔からは火が出そう。

たぶん俺も、今なら必殺技くらいの炎を出せる。




「シミラールックのバカップルなんかほっといて広間に行きましょうか」




薫の攻撃はまだ続く。

こっちはもう致命傷だぞ……。



ちゃっかり服にも気づいてたんだな。目ざとい。


薫が見たいって言ってたから着てきたんだけどな。

だけど津上さんも着てきたのは、嬉しい偶然。




「……あれ?」




ふと、津上さんと博くんの目が合った。




「あのときの……」


「お久しぶりですね」




会釈をする博くんに、津上さんはハテナマークを浮かべながら俺を見る。




「彼も協力してくれたんだよ」




それだけ教えてあいまいにニコリとすれば、全て悟ったように「そっか」と微笑んだ。


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