負け犬の傷に、キス
「もって1週間でしょうね」
博くんは顎に手を添えて呟く。
1週間?
何のタイムリミット?
首をひねると、博くんとユキが補足説明する。
「おそらくすぐには公にしません。なにせこの街随一の病院ですからね。大ごとになるのは避けたいでしょう」
「……1週間は、そこまで大ごとにならないってこと?」
「ただ警察は動くと思うぜ? 水面下で解決できりゃ、被害は小さく済むしな」
「なるほど……」
誘拐した犯人は、院長ならすぐ目星がつく。
警察は俺を狙って追いかけ回すだろうな。
逃げられるかな……?
どっかのヤンキーを相手にするのとは勝手が違う。
1週間逃げ切れたとしても、周知されたら難易度がぐんと上がる。
「1週間でなんとかしないと」
たった1週間、されど1週間。
できることが絶対あるはず!
「あ、あの!」
隣のイスがガタッとうしろに動いた。
突然立ち上がった津上さんに注視する。
「み、皆さん、わたしを逃がすために助けてくださってありがとうございます! 今まで……いえ、きっとこれからもたくさんご迷惑をおかけするとは思いますが、わたしもできることは全てやります。全力で頑張ります!
……な、なので、せめて大ごとになってしまうまでは、どうかご協力お願いいたします」