負け犬の傷に、キス
向かい側にとっての本題。早速か。
空気は最悪なまま。
薫と柏は警戒してピリピリ。
博くんとユキは不適にビリビリ。
雨でも降ったらどうしてくれるんだ。
「交換条件はいいの?」
「先に聞きたいことを聞いてすっきりしたほうがいいでしょうから」
「……わかった。博くんとユキ、それぞれに聞きたいことがあるから答えてほしい」
どっちから聞こう?
時系列的に……ユキからのほうがいいかな。
「じ、じゃあ、まずユキ!」
「おうよ。何が聞きてぇんだ?」
「初めて会ったとき、俺と誰かを間違えたよな? 竹刀で襲うような誰かと。そのあとベルトの抜かれた男5人を路地で倒したはずだ」
「ああ、倒したぜ? 取り逃がしちまったがな。あんときはお前が、あの男らの一味かと間違えちまったんだよな。すまんすまん。……でもお前らが半分ぶっ倒してくれて助かったぜ」
相変わらずこっちのことは筒抜けか。
「ユキはなんであの男たちを狙ってたんだ?」
正直にうんうんと肯定していたユキが、ゆるやかに形相を凍らせる。
「俺らの標的だからさ」
「どういう意味だこら!」
「そうきゃんきゃん吠えんなって。説明はあとでしてやるから」
噛みつく勢いの柏を、余裕たっぷりにいなす。