負け犬の傷に、キス
おかしいところ……あったかな。
どうだったっけ。
んんっと…………あっ!
そうだ、思い出した。
「ゾンビみたいだった……」
「痛みを感じてなかったよね」
「気味悪かったぜ……」
俺、薫、柏がそろって嫌悪感を表す。
やっぱりな、とユキは眉間にしわを寄せた。
「それが理由です」
とうとう博くんは笑顔を消した。
「僕たちの標的は、“薬”を使ってる人たちなんです」
「……く、くすり……って……」
「俗に言う麻薬のことです。薬物に依存していればしているほど正気ではないため、痛覚がマヒしたり、幻覚幻聴が起こったりとおかしな動きをすることが多々あります」
「だからあの人たちは……」
「ええ、そうです。標的を捕らえるときは注意しなければなりません」
写真の男2人は、あのとき幻覚を見て逃げていったんだ。
警察とか逮捕とか話してたのは、薬物が関わるから。
……点と点がつながった。
「僕たちは“薬”を根絶やしにしたいんです」
「嫌いなもんはさっさと片付けたほうがいいだろ?」
博くんとユキの殺伐とした形相に、ごくりと生唾を飲んだ。
深い、深い、憎悪。
ぞっとする。
けれど、なぜだか、少し憂いてしまった。
「お待たせしました!」
津上さんの登場で空気が凪いでいく。
料理を運んできてくれた。
湯気の立つドリアとたまごスープ。
冷えた身心にはちょうどいい。