負け犬の傷に、キス






水曜日に変わる、1時間前。


俺は切羽詰まっていた。





「やばいやばいやばい……!!」




ネオンの光る繁華街を猛ダッシュで通り過ぎ、歩道橋を渡る。


入り組んだ道に駆け込んだ。


野良猫のたまる細い路地におじゃまして、奥にあった大きいゴミ箱のふたを盾に使った。



赤いサイレンが路地を横切っていく。




「……はあ、ギリギリセーフ……」




にゃあ~にゃあ~!
ガルルル……!
シャーッ!!


ひと息ついていたら野良猫たちに怒られた。

足首を引っ掻かれる。



夜道にこだまする鳴き声に、サイレンの音がまたこちらに近づいてくる。




「痛っ! 痛いって! ご、ごめんよ猫さんたち! おじゃましましたああ!!」




やり過ごしたと思ったのに!

再び窮地!!



途中まではよかったんだよ。



アフタヌーンティーを楽しんでいたら、博くんから連絡が来ていたことに気づいた。
捕まえてほしい標的の写真が3枚と、印のついた地図が送信されていた。午後8時、3人の標的が印のついた場所に行く情報をつかんだらしい。



俺は夕飯を食べてから指示通りに動いた。


行ってみたらちょうど薬を使ってるところだった。持ってきたロープで急いで縛り上げ、匿名で警察に通報した。



……そう、ここまでは順調だったんだ。


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