負け犬の傷に、キス
余裕ぶった俺は、通報を受けてやって来たパトカーとはち合わせしてしまった。
ここからだ。
俺の運は尽きた。
院長から話を聞いていたんだろう。
警察は俺を見るなり血相を変えて俺を追ってきた。
せっかく捕まえた標的をスルーするなよ!!
それからずーーっと逃げ続けてる。
パトカーの数が増えて、進んだ先からサイレンが響く。
つらい。足が痛い。疲れた。
つまりやばいのだ。
たぶんサイレンうるさいよな。近所迷惑。安眠妨害。申し訳ない気持ちでいっぱいです。
「はあ、はあ……っ、どっちに行けば安全なんだ!?」
右奥にパトカーの影が見えた。
よし、左に行こう!
「あれ? これ……」
このまま走っていったら津上病院じゃ……!?
大きな白い建物が見えてきた。
や、やっぱり……!
「ど、ど、どうしよう……!!」
真っ直ぐ行っても危険。
Uターンしても危険。
どっちもどっちだな。
「こ、ここは……行っちゃおう!」
灯台下暗しって言うし。
ちょっと避難させてもらうだけ。
なんとかなる! ……はず。
病院の裏手から忍び込んだ。
広い庭に出た。
木製ベンチ、小さな花々、平らに整えられた道。
静かすぎて挙動不審になる。