負け犬の傷に、キス


ここにいたら窓から丸見えだ。

どこか隠れられる場所を探さないと。


よさそうなところないかな。




――カン……。



「……?」




今の……金属音?

地面にこすれたような、そんな音。


小さな音でも、この静けさだといやに目立つ。




「こんな夜遅くに金属音?」




音がしたのは、庭を抜けた細道のほうから。


誰かいるのか?

……おばけ、じゃないよな?



抜き足差し足忍び足で接近し、物陰からうかがってみる。




「っ、ふ……っ」

「た、たす、け……んぐっ、」




……何だ、あれは。



目を疑った。


建物の陰に、4つの影がおごめく。



青いパジャマ姿の幼い男の子が泣いていた。




傾き倒れた車いす。


乾いた土に尻をつける男の子に

痩せ細った男がまたがり


片手で首を絞めつけてる。




「や、……あ……」

「ひゃっ、あ、はははっ」



手を力ませたり弱めたりして遊んでるようだった。


キチガイじみた嘲笑と共に
ポタリと男の子の頬によだれがこぼれる。




「やめっ……!」




女性の悲鳴が途切れる。


看護師らしき女性の両腕を建物の壁に押さえつけてる若い男は、金属バットで女性の腹を強く叩いた。


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