負け犬の傷に、キス



何が、起こってるんだ……?



男2人には見覚えがある。

あのナンパしてたヤツらだ。


こんなところで例の標的と出くわすなんて。


どうせ俺みたく忍び込んだんだろう。



車いすの奥に、1冊の絵本と薬ケースが落ちていた。



もしかして……

男の子があれらを落としちゃって、看護師の女性と取りに来たのだろうか。


真夜中に、男の子自ら。


本当にそうなら、あの絵本と薬はとても大事な物なんだろう。




「は、ぅ……、」

「……も、やめ……おねが……っ」




助けなくちゃ。


頭に血がのぼって
それ以外何も考えられなかった。



気づいたら、男の子を襲うイカれヤローの腹に腕を回し、塀ブロックまで勢いよく押し出していた。




「ぅっ、ぐああ……!」




女性を襲うバット男の脇腹を、うしろから蹴り飛ばす。


よろけた体を背負い投げし、イカれヤローの隣に仲良く並ばせる。



男2人の脇に腕を巻きつけ、体重をかけた。




「今のうちです! 逃げて!!」




大声を出せば、看護師らしき女性がハッとして、男の子を抱えて走り去っていった。



よかった。これでなんとか……



――ガンッ!!




「いっ……!」




背中に激痛が走った。


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