負け犬の傷に、キス
金属バットを振り回すなよ!!
すんごく痛かったぞ!?
「ぐっ、」
背中の次はみぞおちをやられた。
イカれヤローの膝がクリティカルヒットしてご飯吐きそう……。
腕のゆるんだ隙に、イカれヤローとバット男が立ち上がる。
「ふはっ、ひゃっひゃっ!」
「……お前、“負け犬”、じゃねぇかぁ」
変な笑い方、喋り方。
以前より老けた外見。
おばけよりよっぽど怖い。
イカれヤローが殴ろうとしてくる。
横に転がりかわせば、金属バットが真上に迫っていた。
「ひえぇぇ!」
身を引いて避ける。スレスレだった。
あぁ、逃げたい。
ここから消えちゃいたい。
でも、俺が逃げたらどうなる。
違う人が犠牲になったら。
病院がめちゃくちゃにされたら。
……そうなったら、俺は。
――ドゴッ!!
「っっ、」
金属バットが頭に直撃した。
グワングワン、脳が揺れる。
こめかみに生温かい何かが伝った。
……血、かな。
やだな。気持ち悪い。
片膝をついた俺を、イカれヤローはとち狂ったように嗤った。
「ハハハ!」
バット男が金属バットを高く振り上げる。
俺にじゃない。
建物のほうを向いて。
あいつ……! 窓ガラスを割る気か!?
「やっ、めろ……!」
力の抜けた足を無理やり奮い立たせ、バット男の正面に立ちふさがった。