負け犬の傷に、キス
……これでいい。
俺に集中させれば他を守れる。
脳の振動が鎮まってきた。
男2人に攻撃しても意味はないのは、もう知ってる。
体力を削いでいくしかない。
右と左の連続パンチ、ラリアット、ぶれぶれなキック。
全ていなし、男2人の動きを多くする。
自分の体力は大事に使いたい。
極力動かなくていいように仕向ける。
もう血は流さない。
「楽しい、かよぉ? あ?」
「きゃっきゃっ! あひゃっ」
じょじょに男2人の動きがなよなよしてきた。
ゆるみきった拳。
上がらない脚。
なのに優越そうな表情をしてる。
夕日ちゃんをナンパしてたときとはまるで違う。
麻薬って恐ろしい。
「そこで何をしてる!」
「!?」
唐突に庭のある方から黄色い光を照らされた。
眩しくて目をつむる。
3秒後、うっすら片目を開け、光の先をたどってみる。
そこには懐中電灯を手にした院長の姿があった。
「な、なんでここに……!?」
「くっ、ふふ、あっひゃ!」
「誰か、来た。また、いじめる」
しまった!
男2人の意識が院長に……!