負け犬の傷に、キス
一瞬包帯がほどけかけた。
無垢に微笑んだら、今度は包帯がきつくなる。
「いきなり俺みたいな不良が会いに来たら、院長じゃなくたって引き裂きますよ。最初から一回でわかってもらおうなんて夢見ていません。
何回も何回もあきらめずに伝える気でいました。わかり合うのが夕日さんの願いですから。俺はその願いを叶えるために全力で手伝うつもりだったんですよ」
「……あきらめが悪いな」
「ほめ言葉として受け取っておきます」
本当は「だった」じゃなくて現在進行形。
その願いを叶える作戦を考え中です、とは言わないでおく。
こういうのは水面下で準備するのが確実だし!
どうにかあと数日でなんとかしたい。
……待てよ? 手当てしたあと連行されることだって大いに考えられるよな?
だとしたら、作戦考えるどころじゃなくない!?
俺のせいでバッドエンド!?
「きみは何を百面相している」
「いっ、いえ!?」
顔に出てた!?
あ、また、ウソがへたと言わんばかりの鋭い視線。
ええそうです、俺は器用じゃないんです。
いつの間にか頭に包帯を巻き終えていた。
十分に冷やした右肩とみぞおちから氷水を外すと、それらの部分も包帯で圧迫していく。