負け犬の傷に、キス
Ⅲ : 鬼に金棒

●善悪




まったり気ままな放課後。

行きつけのクレープ屋で、いつもの3人。


新作のレモンヨーグルトクレープにかぶりつける幸せ。



やっぱり平和っていいな!




「治安の悪いうわさと、すごく悪いの、どっち聞きたい?」




……って、しみじみしてるときにこれだよ。




院長が少し認めてくれた、水曜日の朝。

夕日ちゃんを家まで送るついでに、ごあいさつと謝罪をしてから、1週間。



津上家の理解や警察への対応にあわただしくしていた。


やっと包帯が取れて、ひと段落ついたのは昨日の話。



夕日ちゃんと常に一緒じゃなくなってちょっと寂しいけど、こうやって繁華街を堂々と歩いても警察に追われないのは安心する。



俺、薫、柏3人そろっての寄り道は久しぶり。

平和なひとときに感激してる!



……のに、なんで

そういう平和の欠片も感じられないことを聞いてくるかな。



なあ、薫。




「……平和な話しようよ」


「いいから。どっち」




生クリームましましを注文したくせに薫はちっとも甘くない。




「治安の悪ぃほう」




勝手に柏が選んだ。



夏めいた気温にどろりと溶けだすピスタチオのアイス。

クレープの上に乗っかったソレが丸ごと柏の口に入る。


一口でかっ!!


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