負け犬の傷に、キス
最後の一口、甘さひかえめのクレープ生地とヨーグルト風味のクリームを一緒くたに頬張ると
――♪♪
かすかな電子音を歌いながらズボンのポケットが揺れ動いた。
「キユーの?」
「ああそうみたい」
「誰から?」
「うーんと……あ、博くんからだ」
携帯には新着メッセージが届いていた。
標的の写真3枚と印のついた地図。
いつもの指示だ。
「標的の件?」
「うん。今日は前に柏にケンカ売ってきた人たちだった」
「あー、あいつらか。雑魚だったしすぐ片付くんじゃね?」
だといいんだけど……。
相手は薬物使用者だからどうなることやら。
今日は捕獲用の道具を持ってない。
なんとかなるかな?
……なったらいいな。
「……あ、またメッセージ来た」
「なんて?」
「今回ので標的10名全員だから、あとでお礼を兼ねてたまり場に来るってさ」
「ふーん、もう全員殺ったのか。早ぇな」
「キユーの恩返しも今日でおしまいなんだ。よかったね」
よかった……のだろうか。
“薬”のうわさが出回ってきてるなら、依存してるヤカラがどんどん増えていってるに違いない。
でも俺は、最初に提示された分を言われた通りにこなしてるだけ。
公言できないやり方も駆使し、情報収集する博くん。
追加されていった標的を仕留めているであろうユキ。
俺は本当に2人の役に立っているのだろうか。