負け犬の傷に、キス



「とりあえず行ってくるよ」




クレープも食べ終えたことだし。

まずは指示をやってのけないと。


地図を確認してみたら繁華街の近くだった。


まさか博くん、俺の現在地把握してるわけじゃないよな!?




「頑張れキユー」


「たまり場で待ってんぞ」




内心ビクビクしながらも、印のついた地点へ行ってみる。


信号を渡った向こうのビルの奥。


地図ではここらへんだけど……

おお、いたいた。




「アレ持ってると狙われるらしいぜ」

「げっ。まじかよ」

「だから殺られる前に殺ってやろうって話が……」




ビルに囲まれた路地。


くっちゃくっちゃとガムを噛む音。

吐き出すタバコの煙。



木箱やドラム缶などの空のガラクタが乱雑に捨ててあるのも相まって、見るからにガラの悪さが目立ってる。



できれば絡みに行きたくない……。

だけどそうもいかないんだよなあ。




「あ、あのお……」



「あ? なんだ?」

「“負け犬”じゃん」

「ウケる。なんでここにいんだよ」




声をかけただけでカラカラ笑われた。なぜだ。



この3人の男ら、柏にケンカを売ったんだよな?


それにしては血の気が多い印象はない。


ひょろくて、楽観的で。

なんなら俺より平和に過ごしてそうな。


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