負け犬の傷に、キス
「“野犬”に言われて来たんじゃね」
「まじかよ。俺らぶっ殺される?」
「わはは! こっえぇなぁ」
透明がかった茶色い歯を見せて笑い合う。
まだ“薬”にそこまで依存はしてないのかな。
だったら話せばわかってもらえるかも。
「えっとですね……よ、よければもう薬物を使わないでもらいたいんです。あなたたちの体のためにも。その……い、一緒に警察に……」
下手に出て慎重にお願いしてみれば、しんと静まり返った。
あれれ?
今の今まで楽しそうに笑ってたのにどうしたんだ?
「こいつ、どこでそれを知りやがったんだ」
「アレを奪いに来たのか」
「どうりでおかしいと思ったぜ」
「え、ええ……!?」
態度が激変した!?
和気あいあいした雰囲気が一気にまがまがしくなる。
……どうやら既に依存していたようです。
「警察だぁ? 行くわけねぇだろ」
「アレを使うのがなんで悪ぃんだよ」
「“負け犬”ごときが指図すんな」
「さ、指図してるわけじゃ……」
「あぁん?」
「なんつった?」
「もっかい言ってみろよ」
はい、黙ります。
右、左、前に1人ずつ立って、俺の逃げ場をなくす。
はたから見たら完全にカツアゲ現場だよ。
これは話し合いできる流れじゃないな。
結局こうなっちゃうのか。