負け犬の傷に、キス
今俺にあるのは、学校用のカバンと携帯と自分の体。
ロープがあれば縛り上げられたのにな。
携帯は壊れたら困る。
カバンの中には教科書とノートが入ってるから武器にはなる。
ただ捕獲するとなると……。
あっ、そうだ! 放置してあるゴミを使おう!
木箱やらドラム缶やら利用すればなんとか捕獲できそうだ。
「無視してんじゃねぇよ!」
声は、右から。
有害な煙は、前から。
拳は、左から。
同時に迫ってきて少し動転してしまった。
煙で目をやられた……!
しょぼしょぼする目を頼らずに、気配だけで拳をかわす。
「けほっ、けほっ」
「避けたか」
「まあいいさ」
「たっぷり遊んで殺る」
目と喉の調子を整える。
こっちは遊ぶ気はさらさらない。
ちゃっちゃと終わらせる!
「うりゃあああっ!!」
乱暴にカバンを振り回した。
適度なスペースができる。
その際に前の男の吸っていたタバコが落っこちた。
今だ!!
火のついたタバコを踏んづけ、カバンを地面すれすれから振り上げる。
前方にいた男の足がすくわれ、文字通りバランスを崩した。
転倒した先には、ドラム缶。
頭から突っ込んだ男は、ドラム缶と共に横に転がる。
「く、くそっ!」
ドラム缶から抜け出せなくて足をジタバタ振ってる。
まずは1人!