負け犬の傷に、キス


痛覚より衝撃がすごい。


おっとっと、と3歩前に右足がリズムを刻む。

よろけた体の軸を元に戻した。


ふぅー……こけずに済んだ。




「希勇さん!!」




3歩うしろ、元の位置には望空ちゃんがいた。


容赦なく突撃してきたくらいひどくあわててる。




「大変大変! 大変なんですー!!」




た、大変か、そっかそっか、わかったよ。
でも何が大変なんだ?


望空ちゃんは赤いランドセルを背負っていた。


ランドセル付きでたまり場に来るのは新鮮だな。




「望空ちゃん、学校帰り? 遅いんだね」


「たいへ……えっ、あ、はいそうです。今日はクラブがあって……ってそんなことどうでもいいんです! それより大変なことを聞いてしまって! もう! ほんとに! すごく! 大変なんですっ!!」


「お、おう、そう……なんだ、それは大変だ」


「そうです! 大変なんですよ!!」




そうとう混乱してるな。

大変ってことしかわからない。




「大変で! もっと大変になる前に早く教えなきゃって思って! クラブ終わってすぐこっちに……!」


「の、望空ちゃん落ち着いて。たまり場で詳しく話を聞かせて?」



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