負け犬の傷に、キス
望空ちゃんも十分大変そうだよ。
空回りしたテンションをなだめる。
「一緒にたまり場に行こっか」
「はい! 今すぐ! 行きましょう!」
なだめるのはムダだったかあ……。
望空ちゃんに腕を引かれる。
ちょ、速い! 速いよ望空ちゃん!
あれ? これジョギングだったっけ!?
町並みが退廃していく。
見た目のごつい倉庫が見えた。
その隣には洋館が待ちかまえてる。
あの倉庫は双雷のもの。
というか洋館のおまけみたいなもの。
元は、お金のつぎ込んだ豪華な設備付きの車庫で、車を最低10台は入る。
今ではバイクの駐車や物置と化して、持てあましているが。
倉庫の中には何台かバイクが停まっていた。
前よりパワーアップした薫のバイクも置いてある。
いつの間に改良したんだろ……。
「あっ」
倉庫から前方に向き直すと、赤茶色の髪が留まった。
ふわり、ふわり
なびくふたつ結びと
さっき食べたレモンヨーグルトのような彩りのワンピースにときめく。
「あ! 夕日さん!」
望空ちゃんも気づいて声を上げた。
洋館前で立ち止まった夕日ちゃんが振り返る。
そのびっくりした顔も、やわくほころんでいく瞬間も、最高にかわいくて大好き。