負け犬の傷に、キス



あのスピーチで何度『かっこいい!!』を連発されたことか……!


俺の耳か、夕日ちゃんの口をふさごうかとも思った。



好きな子からのほめ言葉は殺傷能力が高い。


心臓を一撃。

即ゲームオーバー。


きっと、ずっと、敵わないんだろうな。




「が、学校はどう?」




熱をはぐらかしながら、無理やり話題を変えた。

夕日ちゃんの表情がかすかにくもる。




「うーん……頑張ってはいるんだけど……。うわさって手ごわいね」




あは、と乾いた笑みをこぼす。



俺も白薔薇学園の生徒だったらよかった。

バカな俺じゃ、せいぜい外からしか守れない。


決してひとりじゃない……けど、学園内にいるのは夕日ちゃん自身。


もっともっと力になりたいよ。




「こうなったらいっそ俺が乗り込むしか……」




もうそれしかない!

女装すればいけるか!?




「そっ、それは危険だよ!」


「だけど……」


「希勇くんのこともっと悪く言われちゃう。そんなのやだ」


「……怖くないの?」


「うん、今はもう怖くないよ」




晴れに移り変わった表情に、ウソはない。




「希勇くんがそばにいてくれるってわかってるから、ちょっとくらい傷ついても平気。まだ何も解決できてないけど、希勇くんのおかげで逃げずに立ち向かえる。ありがとう。わたし頑張るね!」



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