負け犬の傷に、キス
「その悪いことについてのうわさも聞きました」
耳が早いな。
小学生にまで広がってるのか?
「ノアチも聞いちゃったんだ……。その『悪いこと』が大変だって?」
「はい。さっきぐうぜん聞こえてしまったんです。悪いことしてる人たちの話を」
「話?」
「次々とけいさつにつかまってること。その前にかならずだれかにたおされてること。――そのだれかをシメるために、どうしをつのってること」
続きをうながしていた薫が、絶句した。
「それ聞いて不安になったんです」
予想していなかったわけじゃない。
標的は不良が多い。
いつまでも受け身でいてはくれない。
だけど、もう少しあとのことだと思ってた。
思い込んでいたかった。
平和を望んでたんだ。
「……こりゃたしかに大変だね」
標的の立場が逆転した。
しかも相手は薬物使用者。
同志をつのって結託してる。
何十人とか集まりそう。
こっちの分が悪いな。
シメるのやめてくんないかな。
……くれない、よな。
そんないい子が標的にならないもんな。
「それ……本当ならやべぇじゃねぇか」
「キユーが協力してるときにこの話って……」