負け犬の傷に、キス



うん、やばいね。ツイてない。

博くんやユキじゃなくて、俺だけがシメられることだってある。


一度捕まったら逃げ切れる自信ないな。




「あいつら、これを企んでたんじゃないの? 手ごろな影武者を作って、自分たちは狙われないように仕向けて……」




隣の琥珀色の瞳がゆらゆら揺れる。

数分前までとんがってたのに。




「そうかもしれないな」


「だから言ったじゃん!」


「でも、俺は違う気がする」


「……どうして」


「なんとなく」


「は?」


「勘だよ、勘!」




ちょこっと願望も入ってる。


琥珀色の瞳がまたとんがった。




「テキトーでしょ」


「ち、違うって! 理由はないし、曖昧だけど、なんとなくそう思うんだよ」


「俺もちげー気ぃする」




おっ! 柏が賛成してくれるとは珍しい!


テーブルからサイズの大きいスニーカーを下ろすと、柏は若干前かがみになりながら浅く座り直した。考える人の像のよう。




「あいつらなら俺らと関わんなくても、よそに狙いを逸らすのくれぇ楽勝じゃね?」




柏は博くんとユキの力を認めてたんだ。

珍しいことが続くもんだ。




「けど恩を売ったほうが確実でしょ? このお人好しには一番効果的」




おい薫! 後半皮肉だろ!?


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