負け犬の傷に、キス
柏の野性的本能の的中率を知ってる上で
薫はいっかんとして警戒し続ける。
ありがとな。
損で面倒な役をしてくれて。
『このお人好し』
それは皮肉めいた本音で。
俺は自覚ないけど
少なくとも薫はそう思ってるから
心配して俺の代わりに疑ってる。
最悪なたらればを考えて、芽を摘んでくれる。
まあ少し……いやすごく、警戒する態度とか言葉づかいとか刺々しくてきついけどさ。
薫がいるから、俺は安心して俺らしくいられる。
もちろん柏も欠かせない。
ふたりの存在にいつも支えられてるんだ。
「……キユー、何へらへらしてんの」
「へっ、へらへらしてた!?」
「思いっきりね。自分の身が危ないってのにアホ面をひけらかしてる場合じゃないでしょ」
「そうですよ希勇さん! もっときき感を持ってください!」
薫はともかく望空ちゃんにまで睨まれてしまった。
ごめんなさい。
「もう本人に聞くっきゃなくね? どうせここに来んだし」
「ウソつくかもよ」
「うさんくせぇならそれ相応の判断すりゃいい。敵か味方か、見定めんのは俺たちだ」
柏の好戦的な笑みに、薫もふてぶてしく口角を上げた。
わっるい顔してるなあ。
なんとも不良らしい友だちの支え方。