負け犬の傷に、キス
●救命
見た目、中の中。
成績、可もなく不可もなく。
性格、よく言えば温厚。
悪く言えば、偽善。
こんなモブみたいな存在なのに……
「おいテメェ! 待ちやがれ!!」
「ひえぇぇ!!」
現在、絶賛、いかついヤンキーたちに追いかけ回されてます。
ぎゃああ!
ムリムリ! 来るなああ!!
放課後になって日直の仕事を終わらせたあと
友だちのいる繁華街に向かう途中――
『あっ! お前!!』
『へ!?』
――声をかけられてしまった。
すぐさま逃げれば、案の定追いかけられこのざま。
こうやって追われるのは初めてじゃない。
じゃ、ない、けど……
慣れてるかは別!!
ふつうに怖い!
「止まれっつってんだろうが!」
「そっちが止まってくださいいいい!!」
誰だって逃げるだろ!
殺人鬼みたいにロックオンされたら!!
「チッ。逃げんじゃねぇ!!」
「すばしっこいヤツだな!」
あ、ほめられた。
ちっとも嬉しくない!!
「お、お願いですからあきらめてください!!」
「ハッ! 誰があきらめるか!」
「お前をぶっ殺すまで地の果てまで追いかけてやる!」
なんでやる気に満ちあふれてるの!?
物騒なこと言わないであきらめてくださいよー!