負け犬の傷に、キス
●名前
空が暗くなってきた。
誰にもウザ絡みされることなく、無事に夕日ちゃんを送った帰り。
たまり場の近くで、ワイシャツとポロシャツの人影を見かけた。
あれは……。
「あ、お兄さん」
「よっ! 顔を合わせんのは久々だな」
やっぱり!
博くんとユキだ!
白いシャツの博くんは、今日も今日とてカンペキな笑顔で。
濃紺のポロシャツのユキの背には、竹刀が仕舞われてるであろうケースが担がれてる。
「久しぶり。たまり場に行く途中? もう行った?」
「いえ、今からです」
洋館はもう目と鼻の先。
あとわずかの距離を一緒に歩いていく。
「頼んだヤツら全員片付けたんだって? 仕事が早ぇな」
「博くんの情報力とユキのサポートがあったからだよ」
「……博はともかく、俺も?」
「もちろん! 俺に頼んだ10人以外にも標的はいたんだろ? でも頼まれた以外の薬物使用者には出くわしたことがないから、ユキがサポートしてくれてたのかなって思って」
違ったかな?
ユキは「へぇ」とあいづちするだけだった。
……当たってたみたい。
「もしかしたら俺が協力した結果、2人がシワ寄せしてるんじゃないかって、ちょっと心配だったんだ。実はそこまで役に立ってないんじゃないかとか……」
「シワ寄せなんてとんでもない。大いに役に立ってますよ」
「ああ、すげぇ助かった」