負け犬の傷に、キス
うーん、その言葉をどう受け取っていいものか……。
「……なら、よかった、よ」
やば。カタコトになっちゃった。
平静をよそおうが、ときすでに遅し。
でも、やっぱり
2人が俺を影武者に仕組んだとは考えられないな。
考えたくない、な。
2人は決して“素”を出さないけれど
俺を、双雷を、傷つけはしないから。
洋館に到着し、広間へ通す。
そこにはラズベリーと黄金だけで、黒髪姿はなかった。
「おかえり~。……それと、いらっしゃい」
「じゃまするぜ」
「こんにちは。おじゃまします」
「望空ちゃんは?」
「帰ったぜ」
「家族とお寿司食べるんだって」
家族とお寿司……いいなあ。
用事があったのに望空ちゃんはここに来てくれたんだね。家に帰ったってことは不安じゃなくなったってことかな。だったらいいな。
怖い思いはできるだけしたくないし、させたくない。
「博くん、ユキ、どうぞ座って」
「いえ、今日はお礼に来ただけなので」
「双雷の総長を借りた詫びもな」
「いいから。そっちはそれだけでも、こっちにはだーいじな話があるんだよ」
薫は空になったグラスをどけながら、視線で座るよう命じた。
薫と柏はピリピリしてないし殺気もない。
いたって落ち着いてる。