負け犬の傷に、キス



うーん、その言葉をどう受け取っていいものか……。




「……なら、よかった、よ」




やば。カタコトになっちゃった。

平静をよそおうが、ときすでに遅し。



でも、やっぱり
2人が俺を影武者に仕組んだとは考えられないな。

考えたくない、な。



2人は決して“素”を出さないけれど
俺を、双雷を、傷つけはしないから。




洋館に到着し、広間へ通す。


そこにはラズベリーと黄金だけで、黒髪姿はなかった。




「おかえり~。……それと、いらっしゃい」


「じゃまするぜ」

「こんにちは。おじゃまします」



「望空ちゃんは?」


「帰ったぜ」


「家族とお寿司食べるんだって」




家族とお寿司……いいなあ。



用事があったのに望空ちゃんはここに来てくれたんだね。家に帰ったってことは不安じゃなくなったってことかな。だったらいいな。


怖い思いはできるだけしたくないし、させたくない。




「博くん、ユキ、どうぞ座って」


「いえ、今日はお礼に来ただけなので」


「双雷の総長を借りた詫びもな」


「いいから。そっちはそれだけでも、こっちにはだーいじな話があるんだよ」




薫は空になったグラスをどけながら、視線で座るよう命じた。


薫と柏はピリピリしてないし殺気もない。

いたって落ち着いてる。


< 202 / 325 >

この作品をシェア

pagetop