負け犬の傷に、キス
「俺が2人にしてほしいことはないよ」
はっきり断言すれば、博くんとユキは口をつぐんだ。
ない、というか……今すぐ浮かばないな。
2人に協力して、それぞれの能力の高さを身をもって痛感した。2人を頼りにはしてるし、協力してほしいときはできたら手助けしてほしい。
でも能力は二の次。
「俺はただ、2人の力になりたい。今回だけじゃなくて、また同じような目に遭っても……何度だって協力させてほしいと思うよ」
俺だって能天気じゃないよ。
嫌いとか怖いとかマイナスなイメージがあったら同盟を持ち出さない。
博くんとユキが表向きだけでも優しいから。
裏なんか知らないけど、絶対に悪い人じゃないから。
俺は、俺の知る“素野博”と“甲斐田志篤”を、助けたい。
「だから、交換条件が成り立たないんだよ。それに……いちいち条件を交換するのも面倒だし、同盟のほうが話が早く済むでしょ?」
ね? いいことだらけ。
そろそろ条件付きのビジネス関係はやめにしようよ。
「どうして……」
「?」
「迷惑じゃ、ないんですか……?」
ひどく大人びていた博くんが、小さな子どものように戸惑ってる。