負け犬の傷に、キス


ように、じゃない。

まぎれもなく小さな子ども。


中学生だもんな。

俺よりふたつも下なのに頑張り屋で、気配り上手。



たまには抱え込んでるものを少しあずけてみたらどうかな。


例えば、俺にとか。




「ふつう他人の問題は避けるでしょう? 隠しごとしてる相手は信用できないし、関わりを断ちたくなる。“薬”が絡んでるならなおさら。
……なのに、どうしてですか。どうしてお兄さんは、自分から首を突っ込むんですか! 迷惑に思わないんですか!?」


「……め、迷惑? なんで?」


「なんで、って……だって……」


「赤の他人ならそうかもしれないけど……博くんとユキが、しかも俺もすごく関係してることでしょ? 迷惑だなんて思わないよ。むしろ関わらないほうが気になる!」




うろたえる博くんに優しく笑いかける。


線を引いたのはわざとだよね。
今ならわかるよ。


俺が巻き込まれないように遠ざけようとしたんだろう。



博くんとユキなりの守り方。


でも守らなくていいよ。

俺だって不良だから。



“負け犬”って呼ばれるくらい臆病だけど、自分の身は自分で守れる。




「それとも双雷は信頼に値しない? 俺は迷惑?」


「そんな、ことは……」



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