負け犬の傷に、キス


えっ!? 薫!?

……って、“無色”!?


もはや何に驚いたらいいのかわからない!




「そうなんでしょ?」




そう聞いておきながら、薫は確信していた。

観念したように博くんとユキは緊張をといた。




「え? え? ど、ど、どういうこと!?」


「だーかーらー、このふたりが“無色”なんだよ」


「え……えええっ!?」


「ちょっと考えればわかるでしょ。薬物のうわさと“無色”のうわさが同じタイミングであんな広まるなんて、意図的じゃない限りおかしいじゃん」




え、そう、なの? おかしい……のか?

全然、これっぽっちも、引っかからなかった。



治安の悪いうわさと、すっごく悪いうわさ。
そのふたつを関連づける発想がない。

うわさはうわさだし。


というか“無色”の存在自体、半信半疑だった。




「実在したんだ……」


「まじかよ……」




ぽけーっとする俺と柏に、博くんは気の抜けた笑みをこぼす。




「はい……実は、そうなんです。秘密にしていてすみません」


「秘密にしねぇといけなかったんだよ。“薬”と戦うのは危険だからな。俺らの正体を悟られちゃあ動きにくくなっちまう」


「それでいつも警戒してたんだ……」




ほう……と感心すると、ユキが「そういうことだ」と眉尻を下げた。


< 212 / 325 >

この作品をシェア

pagetop