負け犬の傷に、キス
えっ!? 薫!?
……って、“無色”!?
もはや何に驚いたらいいのかわからない!
「そうなんでしょ?」
そう聞いておきながら、薫は確信していた。
観念したように博くんとユキは緊張をといた。
「え? え? ど、ど、どういうこと!?」
「だーかーらー、このふたりが“無色”なんだよ」
「え……えええっ!?」
「ちょっと考えればわかるでしょ。薬物のうわさと“無色”のうわさが同じタイミングであんな広まるなんて、意図的じゃない限りおかしいじゃん」
え、そう、なの? おかしい……のか?
全然、これっぽっちも、引っかからなかった。
治安の悪いうわさと、すっごく悪いうわさ。
そのふたつを関連づける発想がない。
うわさはうわさだし。
というか“無色”の存在自体、半信半疑だった。
「実在したんだ……」
「まじかよ……」
ぽけーっとする俺と柏に、博くんは気の抜けた笑みをこぼす。
「はい……実は、そうなんです。秘密にしていてすみません」
「秘密にしねぇといけなかったんだよ。“薬”と戦うのは危険だからな。俺らの正体を悟られちゃあ動きにくくなっちまう」
「それでいつも警戒してたんだ……」
ほう……と感心すると、ユキが「そういうことだ」と眉尻を下げた。