負け犬の傷に、キス
「じゃあなんで希勇に近づいたんだ」
柏の疑問はもっともだ。
双雷と関わったら不審がられるんじゃないの?
現に、双雷側はずっと怪しんでた。
「交換条件を交わした際にも言いましたが、本当に人手不足だったんです」
「そういえばそう言ってたね……。でもよく俺と交換条件しようとしたね? 正体がバレるリスクだってあったのに」
「“薬”が予想以上に広まっていたので、協力者を得るのが一番だと思ったんです。リスクはもちろんありましたが、先手は打てたので」
「先手?」
「そちら側の秘密を握っていれば、たとえこちらの正体に気づいても裏切ることはないでしょう?」
秘密――薫と柏の、あの。
博くんはやり手だな。
アレは効果てきめんだった。
「うっざ」
「ずりぃ」
おいおい、薫、柏!?
目がすわってるぞ!? 穏便に行こう!?
「悪ぃ悪ぃ。俺らも焦ってたんだよ。俺と博しかもう残ってなかったし、それに……」
「え!? “無色”って、ふたりだけなの!?」
「ああ、今はな」
博くんとユキだけ……。
そりゃたしかに人手が足りないな。