負け犬の傷に、キス
「今は、ってことは前はもっといたんでしょ?」
「そ。それでも10人ぽっちだけどな」
もう少し多いと踏んでいたのか、薫はやや驚く。
「よくそれでやってこれたね」
「おっ、薫さんにほめられた」
「ほめてない」
「……ふるい落としましたから」
薫とユキが言い合いを裂いたのは、博くん。
中学生がビビること言った……!?
「ふ、ふるい落とし……?」
「薬物使用者が相手ですからね。ふるい落としは必要でした」
「そ、そう、かもだけど…………えっ、まさか、博くんがふるい落としたの!?」
いや、まさか。
そんな、まさか。
まさかまさか。
あははと笑う。
博くんが頷いたせいで笑えなくなった。
ウソだろ。
「ほ、ほんとに!?」
「ほんとです」
「どうやって!?」
「“薬”による被害者の会というサイトを作ったんです。今は削除しましたが。そこに仕かけをしました。何重ものロックを解除したのち、もうひとつのサイトにたどり着ける仕かけを」
「もうひとつのサイト?」
「僕の目標である、“薬”の根絶やしを呼びかけるサイトです。そこで志篤さんを始めとする仲間と知り合いました」