負け犬の傷に、キス
博くんが始まりだったんだ。
いわば“無色”の創始者。
ふたりの接点を見つけられないはずだ。
ハッキングもそうだけど、博くんってネットワークに強いよね。行動力もあるし、言葉もうまい。スペック高くない? 中学生にしてコレって……これからどうなっちゃうの? すごすぎる。
「博くんの仕かけをかいくぐったんだから猛者が集まっただろうね……」
「ただの猛者じゃないよ。“薬”を根絶やしにしたいほど恨んでる、そうとうな猛者でしょ」
薫は暗に告げている。
ふたりを突き動かす理由は何だ、と。
思い返せば、ちゃんとした理由を聞いたことなかった。
知ってることといえば……
前に一度、ふたりが“薬”に対して憎悪をにおわせたくらい。
「そう、だな……。もれなく全員恨んでるよ。憎くて、許せなくて……だから博のサイトに集まったんだ」
あ、また。
ユキから憎悪の香りがする。
表情も雰囲気もよどんでいく。
「僕たちのことは調べたんですよね?」
「調べたよ。出てきたのはプロフィール程度だったけどね」
嫌みのある薫の口ぶりに、博くんは満足げに目を細めた。
「それなら僕の父のこともごぞんじですよね?」
「えっと、たしか……素野万さん、だよな?」
俺の答えに「はい」とだけ肯定する。
ひと呼吸したあと、ゆっくり話し出した。