負け犬の傷に、キス
あぁ、そうか、だからか。
ふたりの深い深い憎悪が、憂いて見えたのは。
「他のヤツらも似たようなもんだ。それぞれ“薬”に恨みを持ってる。だから博の作戦に乗ったんだ」
「その作戦が“無色”ってことか」
柏がそしゃくするように呟く。
心と脳がパンクしそう。
理解する前に感情がせわしなくなる。
「えーっと……け、結局、“無色”って何なの?」
「薬物使用者の粛清、捕獲を目的とした少数精鋭グループです」
「……ふ、ふむ!」
整理した頭の中に、粛清とか精鋭とか難しいワードが埋め尽くされた
……けど、まだ理解できてるぞ! だいじょぶ!
“薬”の被害をなくそうとしてる強いチームってことだろ!? おっけ!
「“薬”が出回ってんのがほぼ裏社会のほうだったから、必然的にヤクザや暴走族が標的になることが多くてな。俺ら以外のメンバーは標的とやり合ったとき深手を負っちまって、今は安静にしてねぇといけねぇんだ」
「“薬”に関する情報は元々、父が集めていたので、始めはなんら苦労しませんでした。僕もそれなりに諜報できますし」
「……なら俺と薫のことはお前の親父の情報かよ?」
柏の問いにはノーコメント。
あからさまににごされ、柏は舌打ちをした。