負け犬の傷に、キス
「そうでもねぇんだよ。狙った標的のほとんどは確実に捕獲はしてっけど、たった2人、取り逃がしちまった」
「あ〜……あの、クレープまみれにしてやった?」
「ああ。俺が油断しなけりゃよかったんだが……ベルトに固執してたところが妙に笑えてな……ククッ」
薫と柏が俺を睨んでくる。
えっ、俺のせい!?
作戦Bダメだった!?
俺にしては妙案だったんだよ!?
コホンッ、と博くんがせき払いをした。
「その2人が志篤さんのことを他の薬物使用者に教えた可能性があります。それに標的が結託しているのが事実なら、1人をおとりにして大人数で襲いかかってくる恐れもあります」
「大人数ってだけでも肩がこるっつのに、相手が薬物におかされたヤツらじゃ戦いづれぇったらねぇよ。痛覚がほぼねぇから、いくら殺っても復活するし。痛みを感じねぇだけで傷はちゃんとあんのにな」
「同盟を持ちかけなかったらどうするつもりだったんだよ!?」
間髪入れずにつっこんでしまった。
一筋縄ではいかない状況をきれいに解決するのは至難のわざ。
それは同盟を結んでも変わらないのに。
「あちらが数で来るなら、こちらは策でいこうかと」
「だてに少数精鋭でやってきてねぇからな。……ま、ふたりじゃできることも限られてるんだが」
「標的が結託してしまった以上、放置しておくわけにはいきません。謀反を起こされる前にこちらも動き出さなければ」