負け犬の傷に、キス



「だって頑張ったら、傷つくかもしれないでしょ?」




そんなことないよ。

傷つかないよう頑張る。


それ以上に、傷つけないように頑張るよ。




「もし傷ついちゃったら怒る?」


「泣く」




それは困る。

だったら怒られたほうがいい!




「泣きながら、治すよ。どんな傷だって治してあげる」




鼓動が震えた。


あー、涙腺に響く。

あの夢のあとにそれはずるい。



夕日ちゃんの後頭部に回した手で、優しく顔を上げる。


赤茶色の髪を指先に絡ませながら口づけをした。


角度を変えてぷっくりした唇に触れていく。




「んっ、……ま、待って、希勇く、」


「ん?」


「か、カオルさんたち、待ってるよ……?」


「あ、そうだった。もっとしたかったけど、続きは帰ってきてからだね」




真っ赤になった夕日ちゃんに思わずキスをした。

今度こそこれで最後。




「もう! 希勇くん!」




赤らんだ顔で。

とろんとした上目づかいで。


そうやってむくれてもかわいいだけだよ。



もう一回くらいしたい! ……けど自制。




「大好きだよ、夕日ちゃん」


「わ、わたしも……好き。大好き!」




夕日ちゃんの想いがいつだって

俺を救ってくれるんだよ。


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