負け犬の傷に、キス




「ここで待ってるね」


「たぶん寝て起きたら帰ってるよ」


「ううん、起きて待ってる!」


「寝ていいよ!?」


「希勇くんたちが戦ってるのに寝れないよ」




断固として寝る気のない夕日ちゃんに、俺だけじゃなく薫や柏も困ったように笑っていた。



真夜中の2時半。

いい子はもう寝る時間なんだけどな。


とうとう夕日ちゃんまで悪い子の仲間入りかも。




「望空ちゃんたち、夕日ちゃんのこと頼んだよ」


「はい! まかせてください!」




夕日ちゃんの頭をポンポンと撫でながら、望空ちゃんたち下っ端に目を向ける。



望空ちゃんたちには、夕日ちゃんをここで守るよう頼んでおいた。



標的のうち誰かが、俺が“薬”を消す動きをしてると知っていて、夕日ちゃんの存在まで把握していたとしたら。

廃ビルに行かずに、夕日ちゃんを狙う可能性がある。



万が一に備え、夕日ちゃんの守備体勢を整えた。



意気込む望空ちゃんに比べ、ホールに残った数人の下っ端は不安そうにしていた。



先に出向いた下っ端たちも同じ様子だったのかな。


それでも“負け犬”の頼みを聞いてくれる。なんて優しいんだろう。



下っ端たちに甘えて、総長ぶって。

俺って最低だよな。


それをわかっててもお願いしてしまう。


俺ひとりじゃ頼りないから。


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