負け犬の傷に、キス



俺と薫と柏は、非常階段をのぼっていった。


乱戦中とはいえ油断は禁物。

気配を消しながら向かっていく。


階段で誰にもすれ違わない……ということはトラップが効いてるのか、下っ端たちが足止めしてくれているのか。




「キユー、本当に一人でいいの?」


「下っ端たちもいるしなんとかなるよ」


「ぜってーなんとかしろよ」




傷つけるのが怖い俺は、逃げ回りながら捕獲していくしかない。


こんな“負け犬”の戦い方じゃ、みんなの戦いのじゃまをしかねない。


だから幹部クラスの実力を持つ4人とは違うフロアのほうがいいんだ。




「“負け犬”だからって本当に負けないよ」


「言ったな?」


「負けたら許さないよ」




2階に着き、薫と柏と約束を交わす。

作戦が終わったらクレープ食べに行こうな。



ふたりと別れ、さらに段数を数えていく。


階段を上り切り、陰に隠していたロープを肩に担いだ。




3階の廊下に続く扉を開け――




「うぎゃあああっ」


「!?」




――る前に扉がバンッ!!と開いた。



奥から傷だらけの男が突進してくる。


階段側へ一歩踏み入れかけた足が、何かに引っかかり顔面から転倒した。


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