負け犬の傷に、キス
うわあ……いきなりこれかぁ……。
今の痛い。絶対痛い。
頭割れてない?
「も、もしもーし?」
「…………」
反応がない。
ただのしかばねのようだ。
ゲームオーバーの機械音が脳内で再生される。
「気絶したかな……」
早くもロープの出番だ。
男の手足を縛り上げる。
これでおっけー!
幸先いいな。トラップにも引っかかってくれたし。
実は、非常階段に続く扉には仕かけがある。
足元部分にタコ糸をくくりつけているのだ。
部屋にはいくつか懐中電灯を用意したけれど、やはり暗い。階段はもっと暗い。
そのためタコ糸が見えなくて転んでしまう。
「ここまでうまくいくとは……」
引っかかってくれたらいいなあ
くらいのかるーい気持ちで仕かけたんだけど。
この男は傷だらけだし、室内での戦いが壮絶なのかも。
下っ端たちが頑張ってくれてるんだろうな。
男を端っこに寄せてから、タコ糸をまたぐように廊下に出た。
金属音やら殴り蹴る音やら鮮明になってきた。
聞いてるだけで痛々しいな。
戦い真っ盛りなのがわかる。
「あっ、総長!」
「お、遅くなってごめん」
一番奥の大きな部屋に立ち入ると、下っ端のひとりが俺に気づいた。