負け犬の傷に、キス
「聞かなくてもわかるだろぉ?」
この男は
俺のせいで傷ついた。
――俺のトラウマそのもの。
「お前のせいでこーなっちまったんだよぉ」
いひ、ひひっ、と声をかみ殺すように嗤った。
全身の傷痕がひしめく。
血の匂いにむせ返りそうだ。
俺が傷つけてしまったから、この男も薬漬けに……。
「俺の、せいで……」
「ああ! そうだよ! 全部お前のせいだ!!」
嘲笑まじりにまくしたて、木刀で俺の横腹を打った。
痛い。
それよりも
苦しい。
木刀の先端で背骨の真ん中を刺された。
片ひざをついた俺の胸ぐらをグイッとつかまれる。
「あ……っ」
「なんだよぉその目ぇは」
「お、俺は、」
「まぁた謝んのかぁ?」
茶色い歯を覗かせていた口元を、いやしそうに曲げた。
俺を見下ろしながら右頬を強く殴る。
「そーゆーとこが嫌ぇなんだよ」
「っ、」
「なぁ、負け犬さんよぉ」
へその下に男の足裏が落ちてくる。
夕日ちゃんのお守りが傷つくかもしれない。
それだけは……!
とっさに身をよじった。
あがいてるように見えたのか、気性の荒い男は俺の手の甲をグリグリ踏んづけた。
「ぐ、……っ」
「消えろよ」
また木刀が振り回される。
お守りが無事ならいっか。
因果応報って聞いたことあるし。
全部、全部、ジゴージトク。
なんて、つくづくかっこ悪いな。
自分の身を守ることすらやめてしまったら、本当に、消えてしまいそう。